2021年4月16日

第1回市町村議会議員特別セミナー:1日目

令和3年度 「第1回市町村議会議員特別セミナー」を受講するため、琵琶湖近くにある全国市町村国際文化研修所(通称:J IAM)へ。

4月15日16日の2日間の日程で4人の講師からそれぞれ講義を受ける。はじめは京都大学心の未来研究センター教授 広井良典氏から「人口減少・ポストコロナ社会のデザイン」という内容。

1、人口減少社会のデザイン
人口減少社会のデザインを考える上で今はターニングポイントと言える。このポイントを起点に急激に減少していくと考えられているからだ。日本は人生における選択の幅が狭く、ソーシャルサポートが弱く、寛容性(寄付文化がなじまない)がないとされている。その中で幸せはローカルから生まれると考え直していく必要がある。例:G A H(グロス・荒川・ハピネス:荒川区民総幸福度)のような指標も必要になってくるのでは。元ネタはブータンのグロス・ナショナル・ハピネス。

□幸福の規定要因として考えられるもの
・コミュニティのあり方(人と人とのつながり)
・平等度(所得等の分配)
・自然環境とのつながり
・精神的なよりどころ
1975年は全てが東京に向かって流れてくる、中央集権の時代。現在はそれとは逆の局面に来ていると考えられる。若い世代のローカル志向はグローバル化の先のローカルな部分に魅力感じているということ。つまりローカル志向は時代の流れと言える。ということは内向き思考を支援する政策が必要になっている。時間軸の優位から空間軸の優位へ(各地域の持つ固有の価値。風土的、文化的多様性への関心)「地域へ着陸」する時代となる。コロナによって加速されているとも考えられる。

東京への転入者は1990年代半ばから横ばいである。東京への人口流入が増えたのではない理由は転出が減ったからである。そのためにどんどん高齢化している。これは高度成長期に起こったことの遺産である。とにかく密集には限界が来ている。

2、AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言
A Iを政策立案に使えないか
債務残高の国際比率(対G D P比)は日本が突出している。生活保護を受けているものの割合、社会的孤立の状況、日本は最も高い。つまり1億層中流ではなくなってきている。その他様々な問題をAIを活用して定量的にシュミレーションすることで政策提言に結びつける。

結果は2050持続可能性を考える上では地方分散型が望ましいということ答えだ。そのために重要なものは地方税収、地域内エネルギー自給率、地方雇用などについて経済循環を高める政策を継続的に実行する必要がある。
参考:岡山県真庭市はS D Gs未来都市に選定
され、包括的な意味での分散型を実践している。昭和とは、集団で一本の道を登る時代 これからは各人が自由度の高い形で多様な働き方や生き方をデザインし、自らの創造性を伸ばしていく時代。という言葉も印象的だ。

3、分散型社会のイメージ
①:コミュニティとまちづくり
人口全体に占める「子ども・高齢者」(15歳未満と65歳以上)の割合である地域密着人口が増加している。これは地域との関わりが強い世代の増加を意味している。つまり否が応でも地域が重要になる。問題の一つに退職後の居場所がある。アンケート1位は男女ともに「図書館」である。しかし男性ではほぼ同等で「見つからない/特にない」と回答している。
重要なことは居場所を意識したまちづくりである。福祉政策とまちづくり・都市政策をつなぐ事が求められている。高齢者等がゆっくりと過ごす空間が街の中にある事が重要。例:ドイツ:エアランゲン(人口10万人)中心部が自走車をシャットアウトしている。

福祉と環境と経済の相乗効果、介護予防的な効果も見込める。前橋で例えると弁天ワッセのような取り組みだ。前橋も国交相の進めるコミュニティ空間を重視したまちづくり・地域づくりウォーカブルシティを目指しアーバンデザインを策定した。

I O Tのメッカの一つとして知られるドイツのハノーファー。スマートシティというと効率性とかハイテク性に向け過ぎているがハノーファー人間の顔をしたスマートシティである。これも4月16日にスマートシティ構想に申請した前橋市としてはとても参考になる。

アメリカ型の郊外ショッピングモールから歩いて楽しめるまちへと変わっていく必要がある。 高齢化をチャンスとしてコミュニティ空間という視点を重視した歩行者中心の街の実現
例:姫路市駅前トランジットモール化、熊本市街の大広間など

4、分散型社会のイメージ②ローカライゼーションと生命の時代
ローカルなヒト・モノ・カネの循環カギである。例:岐阜県郡上市白鳥町小水力発電(上掛け水車型:NPO地域再生機構の副理事長、平野彰秀さん)「自然エネルギーは、自然の力をお借りしてエネルギーを作り出すという考え方であり地域で自然エネルギーに取り組むということは、地域の自治やコミュニティの力を取り戻すことである」エネルギーづくりはまちづくりなのだ。ローカルなところでエネルギーを自給する以外道はない。
平野さんの活動などがドキュメンタリー映画になっている「おだやかな革命」。永続地帯:都道府県別で見ると20%を超えているところが20あり、 群馬県は5位で28.5% となっている。水力発電の力だ。 工業化がナショナルをもたらし、情報化がグローバルをもたらした。そしてポスト情報化として、ローカルから出発してナショナル、グローバルへと進化していく。例:ソーラーシェア 学生初ソーシャルベンチャー グローバル化の限界がコロナによってもたらされた。ポスト情報かは「生命(L I F E)、生態系(エコシステム)」の時代に突入している。
※生命関連産業の需要性が高まっている。
・健康医療
・環境(自然エネルギー)
・生活福祉
・農業
・文化

5、伝統文化の重要性
祭りが盛んな地域ほど若者が定着したりUターンするという結果がある。
鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想。全国にある8万1000箇所の神社と8万6,000箇所あるお寺はかつてコミュニティの中心として存在し、経済、教育、祭り、世代間継承などコミュニティの多面的な機能を担っていた。このコミュニティと自然エネルギー拠点整備を結びつけていくプロジェクト。つまり自然エネルギーという現代的課題と、自然信仰コミュニティが一体となった伝統文化を結びつけたものとして日本が世界に対して誇れるビジョンになりうる可能性がある。例:石清水八幡宮 秩父神社

6、若者支援と「人生前半の社会保障」の重要性
人生前半への支援が必要である。1987年に国連「環境と開発に関する世界委員会」の報告書「われらの共通の未来」で持続可能な発展とは。将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような発展とされた。日本は、人生前半への支援がかなり低いと言える。教育費もOECD加盟国中最低である。若者支援の強化は必須だ。

7、どのような社会を目指すのか「持続可能な福祉社会」ビジョン
高齢化が地球規模で続く。目指すべきは持続可能な福祉社会。そのためには環境・福祉・経済の総合化が必要。環境とは「富の総量(規模)」に関わる。課題ないし目的は持続可能性である。福祉とは「富の分配」に関わる。課題ないし目的は公平性(公正、平等)である。経済とは「富の生産」に関わる。課題ないし目的は効率性である。

□解決策
高等教育の平等性。地域おこし協力隊を1万人規模にすることで農業版B Iが可能になるのではないか。フロウのジニ係数よりもストックのジニ係数。金融資産、土地の問題、相続税を高くして人生の最初方に割り当てる。持続可能な開発は中長期的に見るとコストが安い。

二人目は、奈良県生駒市小紫雅史市長による「コロナ禍のピンチをチャンスに変える自治体になるためには?」キーワードは公務員の兼業、副業を促進、自治体3.0、ワークライフコミュニティ。
ベットタウン卒業しよう!がテーマ。県外就業率全国2位のO NとO F Fの切り替えができるまちを目指した。

1、生駒市 ビジョン・ミッション・バリュー
2、V Mを支える2つの考え方
3、生駒市の先進的な取り組み
4、議員の皆さんにお願いしたいこと
コロナ禍のチャンス1:地域活動の大切さを再認識(社会面における)
学校の臨時休校や道や公園の雑草、高齢者サロンの役割などこれまで当たり前だった風景が実は地域活動に支えられていたことに気がつく

チャンス2:地元も魅力発見
在宅勤務の増加や市外での余暇活動の自粛によって地元店の利用が増えて地産地消が進む(さきめし:1億1000万円の経済効果)また、地元の素敵な場所・ヒト 地元の魅力が再発見された。今までは大阪と京都が近いが故に吸い取られていた。

チャンス3:I C Tの活用と広がり
スマホクーポンや孫とのオンライン帰省などにより高齢者のICTが見直されることで自治体活動にI C T活用や若者参加を進めるチャンスとなった。

チャンス4:現役世代を地域活動に参加してもらうチャンス
現役のうちから、地元友達を作って、地域活動をした方が楽しい人生が送れそうという気運。地元にお金を落とす。例:いこま男会 街のために何かしたい(B B Q大会、空き家回収)という現役世代が立ち上がった。

□生駒市 ビジョン・ミッション・バリュー
・自分らしく輝けるステージ・生駒 (ビジョン)
市民の音楽イベントなどを促進。市役所しかできないことはスピード感持ってやるが、市民ができることはやってもらう。誰かにしてもらうよりもやったほうが満足度が高く、イベントプロデューサーは定住する確率が高い。まちづくりに汗をかいたほうが愛着が湧く。D I Yのまちという言葉も印象的。

・この街で暮らす価値をともに作る(ミッション)
「住」「働」だけではなく「暮らし」→ワークライフコミュニティの融合。行政だけでもない+市民だけでもない→進化する自治体3.0(市民、事業者、市内外の専門家、これからの市民・事業者、全国の生駒ファン)行政職員は市役所の中だけで仕事するな!主役は市民・事業者、関係人口などだと伝えている。

・生駒愛・人間力・変革精神(バリュー)
社会が変化している中で例年同様は後退しているのと同じである。公務員の終身雇用を見直すことも求められていく。協創することで市内在住者の満足度を上げる※内に目掛けたシティプロモーションが弱くなっている。前橋市に誇りを持っている市民がどのくらいいるのか?
生駒市はBed Town なので仕事か家庭かの二択しかなかった。ただ寝に帰るだけの場所。
ワークライフバランス ワークとライフだけか?仕事と家庭のみの人生ではつまらない。そこに地域社会との関わりを加えていく事がワーク・ライフ・コミュニティの融合である。生駒市の定住意向率は88.9%、前橋の定住意向率はどのくらいなのか。日本人は頼るのが下手。介護、子育ても地域の力を借りられるはずだ。地域力をもっと活かすことでコミュニティも充実する。

□生駒市の先進的な取り組み
ビジネスベースを意識する事が大切。おじいちゃんおばあちゃんにも汗をかかせる、汗をかいてもらう。弱者だと決めつけてはいけない。してあげるのではなくてみんなでやる。地域コミュニティの場(公民館など)で健康文化、コミュニケーション、子育て女性活躍、買い物・生活支援、環境3Rなどを循環させる。まさにDIYの精神。

生ゴミ処理機を自治会館置く。地域住民は生ごみを持ってくることでも貢献できる。そこで生まれるのは堆肥とガス。堆肥は公園の緑地・花などに活用し、ガスでコーヒーを沸かす。空(から)でくるならなんか持ってきて!と呼びかける。生ゴミ、新聞紙 家で余ったもの 食器なども。最大の移動・生活支援を市民・事業者・市の協創で実現した。これは自治会の将来にとても関係してくる。

市役所職員にプロ人材の採用
公務員試験やめた。日本一はやい試験日程・S P I試験を導入した。いい人材なのにイノベーション人材が採用できない、育てられない。自治体は新規採用にこだわりすぎる。しかし、ただの中途採用にするとあんまりいい人材は見込めない。優秀な人材を採用するための工夫として
限りなく(働きやすい、やりがいのある、成長できる)環境を整備した。
議員として

・行政だけでは拾えない現場の声、ニーズなどを行政に届ける
・自身も地域活動をするなかで体感したリアルな感想を行政に伝える
・まちづくりに繋がらない質問はしない
・100点は求めない

市民とのワークショップは3回やる。例えば「どういう図書館になったらいいですか?」1回では出ない意見も出てくる。行政でしかできないもの、市民でできるもの、を区分けして一番いい形を検討していく。例えば市民が運営している企画で図書館で地ビールが飲めるというイベントアドも誕生した。

前橋市議会議員 岡 正己

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