2022年5月15日
主役は「月に吠える」無削除版。
萩原朔太郎の第一詩集「月に吠える」は、当時の検閲に引っかかり流通する時にはその中の詩2篇が削除された。しかし、当初朔太郎が知人らに送っていた何冊かは、削除を免れて完全な状態で存在することになる。この無削除版はその経緯や数などからとても価値がある詩集として知られる。
萩原朔太郎記念館として故郷の前橋にある前橋文学館、ここには朔太郎に関してのものが全て揃っている必要がある。しかし、前橋文学館にはこの「月に吠える」の無削除版はなかった。昨年までは。。
前橋市市政施行130周年記念 第50回朔太郎忌 謎めぐり「月に吠える」の事件簿へ。600人座れる会場はほぼ満員。
第1部は対談、第2部はリーディングシアターという2部構成。朔太郎没後80年の節目の時、主役はやはり第1詩集「月に吠える」の無削除版である。
第1部は、「月に吠える」の無削除版を7冊所蔵し、うち1冊を昨年文学館に寄贈していただいた川崎幸希氏と、詩人・作家で第17回作太郎賞をはじめ数々の賞を受賞している松浦寿輝氏の対談。
初版本の魅力からなぜ前橋市が今まで所蔵することができなかったかや、今回寄贈することとなった経緯などをとても面白く聞くことができた。川崎氏の「SNSは怖いですからね〜皆さん多言無用ですよ〜ここだけですよ〜」と茶目っ気たっぷりのトークは聞くものを惹きつける。
「初版本は、その時代にわたしたちを連れて行ってくれる」という言葉も印象的だった。朔太郎忌なので話の中心は当然萩原朔太郎なのだが、その他の群馬の詩人にも少しだけ触れていた。この部分はまた別の機会にしっかりと伺いたいと思うほど良い内容であった。
川崎氏が自費で製作し会場で配布してくれたパンフレット「初版本の魅力〜朔太郎と群馬の詩人たち」は保存版となるだろう。
第2部は、朔太郎が苦悩の末に完成させた「月に吠える」誕生までのストーリーと、その後検閲によってその中の詩2篇が削除されるまでのストーリーがリーディングシアターという形で表現された。
没後80年、朔太郎忌50回目の節目にふさわしい内容であった。
□本日のめぶき 「群馬」
前橋市民文化会館(昌賢学園まえばしホール)小ホールの緞帳は馬の群れ(群馬)だった。
前橋市議会議員 岡 正己