2022年10月14日

第84回全国都市問題会議1日目。

第84回全国都市問題会議
個性を活かして「選ばれる」まちづくり〜何度も訪れたい場所になるためには〜
に参加した。会場は出島メッセ、開会式は9時30分から。2日間の日程で行われ、初日は基調講演、主報告、一般報告、2日目はパネルディスカッションという日程。

□基調講演 株式会社ジャパネット・ホールディングス代表取締役社長兼CEO 高田 旭人氏
民間主導の地域創成の重要性

ジャパネットはテレビショッピングなどの通信販売業で有名な会社であるが、ここ最近は地域創成の取り組みも行っている。きっかけはサッカーJ2 V・ファーレン長崎Jをグループ会社化したことから始まる。スポーツチームの運営、その後スタジアム建設へという流れになる。

長崎駅から徒歩10分程度のところの三菱の幸町工場跡地を見て平地が少ない長崎市にとってチャンスであると感じた。当時36歳運命のようにスタジアムシティプロジェクトが始まった。2020年にはバスケットチーム「長崎ヴェルガ」も立ち上げ運営し、スタジアム・アリーナや商業施設、ホテル等で構成するまちづくり「長崎スタジアムシティプロジェクト」を進め2024年の開業を目指している。

ジャパネットは、通信販売業である。その仕事は「見つける・磨く・伝える」(例えば、クルージングやウォーターサーバーなど。)ことが全て。これは地域にも置き換えることができる。

行政と民間の役割は違う。スタジアムは年間20試合で収支を合わせなければならない。行政が行う事業で最も大切なことは公平性である。例えば、スタジアム建設となると陸上競技場がついたり、ラグビーもできた方がいいなど公平性の観点からそれ専用の用途となることが難しくなる。

分かり易い部分にVIPルームが作れないということがある。しかし民間は違う。高級なVIPルームやサービスなどで満足してもらうことで利益につながっていく。海外のスタジアムの事例:開放的、オフィス隣接、1日中楽しめる、選手が近いなどのワードが出ていた。例えば20,000席のうちVIP席を約800席にした時この4%が 鍵となる。

長崎市は転出超過都市である。東京・大阪・福岡に行かせない為には、戻って来た時に楽しめる街である必要がある。それは、歴史・文化・平和・夜景 長崎の特徴を全て活かすことで可能になる。

・長崎スタジアムシティプロジェクトの説明
長崎駅から徒歩10分、7ヘクタール、再来年の9月にオープン。20,000人スタジアムの横にホテル245室、商業施設の中に約90店舗、6000人のアリーナ(1000人〜5000人でも空席感を感じない仕様に)、オフィス13,900㎡11階建で長崎大学大学院や全国規模の会社(新しい仕事を創出する。)が入る。

その他アイデアも満載
・スタジアム・アリーナの空き部屋をオフィスの会議室として使う
・医療ツーリズム
・塾の送り迎えの時間で過ごせる場所
・スタジアム内の日本一美味しいビールが渋滞を解決!
・VIPルームは試合がない時にホテルにかわる(とにかく稼働を高める)
・スタジアムとアリーナの間に放送スタジオ(試合と試合の間や終わった後にオリジナル番組)
・人間は2時間6,000円は高いと感じるが1日10,000円は安いと感じる。試合だけではなく1日楽しめる場所にすることで費用対効果を感じやすくなる。
・スタジアムの上をジップラインが通る
・商業施設ではシニア向け習い事などで稼働率を上げる
・スタジアム全体でキャッシュレスに取り組む※持っていない人には貸出もあるが入り口でスマホを販売(ジャパネットの得意な部分)する
・キャッシュの煩わしさを感じさせる
・試合の後の駐車料金に差をつける。(試合後すぐは3000円2時間後は1000円など)

□ジャパネットの会社としての取り組み
ホワイト500に4年連続。18時半以降は残業ゆるさない。16連休を取らないといけないスーパーリフレッシュ休暇がある。こうすることで仕事を休みの間誰かに託すことになり個人依存をなくす。離職率も減って来ている。専用アプリでランチが無料に。上司が部下を誘いやすくなる。コストはかかるが卵子凍結補助40万円の制度もある。社員が意味を考えるようになる。効果がでかいのは断捨離。ノー会議タイム:会議と商談を禁止する。集中ルームがある。

ジャパネットは長崎市だけではなく、クルージング事業(年間4000人/100億)やBS放送局BSジャパネクストなどを通じて全国的な取り組みも考えているようだ。また、スターフライヤーと資本業務提携をすることで飛行機の便丸ごとジャパネットでやることも考えている。

□主報告 長崎市長 田上富久氏
長崎市の魅力あるまちづくり
長崎市はなんといっても港があったことに由来する。現在は人口39万、面積405.86㎡。明治22年〜どんどん合併して現在の面積となった。オリジナルの未来の暮らし方、活力の作り方としてネットワーク型コンパクトシティをマスタープランに掲げている

市民に観光は誰のためのものと問うと「旅行業者のもの」となってしまっていた。市民に喜ばれる観光でなくてはならない。
宿泊税を財源に、DMOとパートナーを組みながら観光に力を入れた。まちの価値、まちのOSを書き換える感覚。

由布市の有名な話。静けさに価値があることに気がつけるか。どこにでも気づいていない価値がある。例えばモナコ。F1のモナコグランプリが行われることでも有名。できないと思うか、できないと思うことをやるから価値がある。自分たちの持っているものを徹底的に生かすことが必要である。個性を強みにしていく。

価値を見つける:あると思っているから見つけられる
価値に気づく:軍艦島、長崎さるく等
価値を磨く:景観専門監制度の導入 H25〜(一般社団法人地域力創造デザインセンター代表理事 高尾 忠)
・出島表門橋が2017年に130年ぶりに架橋(10億の基金を半分使用)
・遠藤周作文学館の思考空間アンシャンテ
・ラグジュアリーホテル開発(森トラスト)2024年開業 マリア園

空き家を地域の方々が管理するなら市が除却しその跡地を農園として地域の方々と利用する「さかのうえん」という取り組みも紹介していた。地域課題が資源になるという発想の転換。空き地空き家を若者の居場所に変換する。風の人(若い人、外から来た人)と土の人(元々の地元の人)の交流が大事。

□一般報告 島根県立大学地域政策学部准教授 田中輝美氏
地域との新しい関わり方・関係人口

関係人口とは、短期間の交流や観光という関わり方ではなく、長期間暮らすという定住という関わり方でもない。その間にあるもの。何度も人が通ってくる3つの事例の紹介があった。

・鳥取市用瀬町もちがせ週末住人の家
住民と鳥取環境大学の学生が作る空き家ゲストハウスの取り組み。週末になると週末住人s(登録者数120人)がやってくる。ウェブサイトに掲げられている言葉「日本全体の人口が減っていく中で、地方同士で奪い合ってもしょうがない。まちを面白くしていけるのは、まちにいつも住んでいる人だけではないはず。だからこそ【人口をシェアしよう】」。

・島根県雲南市50人の草刈り応援隊
年に3階毎年通ってくる。汗かいた後に住民との交流がある。準備から後片付け・打ち上げまで一緒に参加する。
地域+若い世代の変化 = 新しい潮流

都会は繋がりの喪失、地方は人手不足という、都市・地方どちらも課題を抱えてる。これまでは交流・観光 移住・定住の2つしかなかった。お得合戦による奪い合いになりゼロサムゲームになっている。

観光以上、定住未満の外にいる仲間。役割があるとくる。観光客と関係人口は役割が違う。予備軍は多様に存在している。どの組織も増やせて過剰に奪い合わなくていいという限られた担い手をシェアする考え方。関わり方は、買う・いく・働く。
・おてつ旅(全国各地)お手伝いをして一緒に汗をながして大事な地域を増やしていくというサービス

空き家解消の取り組みリノベーションスクール「リトルフクオカ」
よそ者に何ができるのか
1、地域の再発見
2、誇りの
3、知識移転
4、地域の変容を促進
5、しがらみのない立場からの問題解決

候補者予備軍はどこにいるのか。地域に関わりたい都市の若者、生まれ育った出身者、転勤や進学で住んだ人たち、繰り返し訪れるリピーター、過去のイベントで関わった方等。つながりこそが資源である。ゼロから無理やり「創出」しなくていい。

新しいインフラ関係案内所 ※観光案内所とは違う
・ゲストハウス
・カフェ コワーキング シェアオフィス シェアハウス
必要な機能
関係案内人を中心としたコミュニティ
公共交通機関(特に鉄道)
最低限のインターネット環境

とりあえず関係人口は避ける。近く(県内市内)の関係人口に目を向け、通う以外の関わり方を実験してみる。
地域(都市=個性)って何か。答えは人の集合体。楽しく魅力的な人が多ければそれは楽しく魅力的な地域であり個性

 

ビジョンを活かしたまちづくり
〜選ばれる山形市を目指して〜
山形市長 佐藤孝弘氏
東大〜官僚(経産省)〜現在2期目
選ばれる街を目指して
1、他にはない町の魅力を磨き発信する
2、それを加速するためにヴィジョンを示す
3、ビジョンと具体的な政策のリンクに徹底してこだわる※ここポイント

ビジョンをうまく使い、市民・企業に浸透させていく。医療資源が豊富(公立の病院が立地、人口あたり病院診療所数が多い、
重粒子センターが最近オープン)。山形国際ドキュメンタリー映画祭は全世界から応募が来ている。東北芸術工科大学とのリノベに取り組む。ユネスコの創造都市ネットワークに加盟(2017年)した。

山形市の2大ビジョン
・健康医療先進都市
医療先進市立病院の充実と山形大学との連携。健康については市民の健康寿命延命が最大の課題なので、歩くこととそれを補完する公共交通の充実をまちづくりの中心においた。保健所長副署長も医師。健康ポイント事業 SUKSK(スクスク)。ポイントによっていいものが当たる事業で9000人近い登録者がいる。楽しみながら歩く習慣を身につけることができる。

ウォーカブル推進都市 、御殿堰を活かしたまちづくり。地下水14度を活かした地下水還元方式無散水消雪システムを導入。冬は雪を溶かし夏は冷やすのに使える。屋内型児童遊戯施設シエルターインクルーシブプレイス コパルwp令和4年4月にオープン。視察が多い。 ※新建築の表紙になった

・文化創造都市
1、市民のさらなる参加・共有
山形市文化創造都市推進条例 → これを根拠に作る
まちのあちこちにアートを散りばめる

2、文化創造都市の発信拠点・活動拠点づくり
山形市立第一小学校旧校舎をリノベーションして文化創造都市の拠点、山形クリエティブシティセンターQ1(旧1小学校、クエスチョン、クオリティを高めるなどのQ)として利活用している。また、山形ビエンナーレや山形秋の芸術祭なども行っている。中心市街地の空き家をシェアハウスにしてアーティストインレジデンスに活用。

ビジョンを掲げた上でそれを具体化する事業とか、政策が目に見えるというところがポイントである。それに呼応して市民・企業等がその方向性に合致する取り組みをはじめ全体としてまちの個性がより濃くなる。

まちづくりの共通言語としてビジョンの需要生を市政懇談会、経済団体会議、職員研修(未来創造会議1500人研修)などで共有している。

□一般報告 (一社)地域力創造デザインセンター代表理事 高尾 忠志氏
交流の産業化を支える景観まちづくり

土木で景観を専門にしていて、1つ1つの公共事業に価値をつけていく作業。公共事業をデザイン面から指導管理する。それらを通じて人材育成も行っていく。役職的には次長級非常勤で部長と課長の間。
マズローの5段階欲求の下層部分、安全である、便利である、だけではインセンティブにならない。高次な欲求を満たせなければならない。知的好奇心が重要。公共事業で高次の欲求を満たしていく器を作る感覚。長崎のオリジナリティを育てていく。その中で交流を産業化する。その場に行かないと享受できない価値が重要。これからはより一層求められる。

100以上の事業を景観とかデザインの面から監修した実績がある。年次当初に関係課と協議する。庁内横断的なポジション
。現場のルールを徹底する。決められた予算と決められた工期で考える。2、3これだけは妥協NG!としたものもある。市民シンポジウムのコーディネーターなどプロセスデザインの役を受けることもある。

1、平和公園爆心地ゾーンエントランス改修
対流空間にならなくてはいけない。(修学旅行生などが溢れている)道路は道路、公園は公園のデザインが上がってきた。道路か公園かは関係ない。また木は切っていいのか等。現場に行くのは絶対。平和公園の資料を読み込み、H5年のマスタープランを参考にした。シークエンス効果を出し、それから爆心地へと向かっていくようにデザインした。緑のエッジを作る。公園のラインを越境する。メタセコイヤの木をトンネル効果とした。平和公園に何か手を入れていくたびに完成度が高まっていく。

過去+現在=未来

想いを持って仕事に励めば、0予算でも工夫次第で新たな価値を生み出すことができる。

鍋冠山公園再整備
とにかくバリアフリーにするという行政職員の悪い癖「目的意識の限定化」が出てしまったデザインになってしまっていた。重要なのはユーザー目線で考えているのかという部分。
現場をよく観察する→良いところを見つける→顕在化する
世界遺産が5つ見えることがわかった。バリアフリーの動線を特別にするんじゃなくて、メインにする。これが本当のバリアフリーである。

3、稲佐山山頂電波塔ライトアップ
コンセプトペーパーの検討。市民にとって誇れる日常風景とは何か。地域の人たちにとって大事な風景を観光客が見にくるという仕掛け。演出するにあたっては日本初、日本最大などアピールポイントも重要。お寺の鐘のように市民の生活に染み込んでいくものが望ましい。事業費は300万〜400万の小さな事業であったが、街の中の部分を少しづつ変えていき、部分を変えていくときに街全体がどう変わっていくかを考える。

街中全体の夜景を進化させる「長崎照明探偵団」めんでかおるさんのワークショップを行った。いいあかりと悪いあかりがある。それをもとに環長崎港夜間景観向上基本計画を策定。無関心に照明がつけられすぎているので丁寧に明かりを設定する。メッセージ的に重要なところに光を当てることもポイント。結果、土木学会デザイン賞2021優秀賞受賞

長崎駅周辺エリア
1、デザイン調整の体制の構築
利活用計画を先に作り、それを実施設計に反映させた。誰が事業主体かは置いておいて、越境するために全体で考える。

環境的資本 (生態系+景観)、社会関係資本(信頼関係、ネットワーク)、人的資本(人が持つ能力)、個々の公共事業を丁寧に見直していく必要がある景観専門監とは、インハウススーパーバイザーで職員に伴奏する家庭教師のような存在である。

地域自治の専門は自治体職員である。

□本日のめぶき 「景観専門監」
様々な学びがあったが景観専門監の取り組みがいちばんめぶいた。

写真など

前橋市議会議員 岡 正己

過去の活動報告

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あかとねの日々の活動レポート

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