2020年10月12日

泊まれる公園。

全国から視察が絶えないという静岡県沼津市にある「泊まれる公園INN THE PARK」に。今までなかなかタイミングが合わなかったが開催されるイベントに合わせて伺うことができた。この森の中の球体テントがトレードマーク。

「泊まれる公園 INN THE PARK」とは、昭和48年に青少年の宿泊体験施設として「沼津市立少年自然の家」が開所し、多くの人々に利用されてきたが、利用者減少などの理由により廃止されることに伴い、民間事業者の持つ優れたノウハウを導入し、既存の建物や周辺の自然環境を活かした新たな価値の創造を目指した取り組みである。公募により選定された事業者により、公園一体型宿泊施設として平成29年9月にオープンした。

新たな価値の創造と聞いて自分の目でしっかりと確認したかった。前橋は新しい価値の創造都市を目指している。INN THE PARKは市管理の愛鷹運動公園の中にある。この公園は競技場などがある県管理の愛鷹広域公園と隣接している公園で、市立と県立の公園が隣接しているという点では前橋だと敷島公園みたいな感じだろうか。東京から1.5時間の立地もなんだか前橋と近い。ただそこには海があり新鮮な海産物などがある。

昭和57年には年間利用者数が4万人以上となったが、それ以降減少が続き、廃止前は1万人前後を推移していたという。平成23年に沼津市の事業仕分けがあり、利用形態・運営形態の見直しについて指摘を受け、翌24年には行政改革推進に関する提言書において、管理コストとして年間約6千万円の経費がかかっていたとのことで、「施設廃止の方向で検討すること」との提言を受けた。

平成27年に民間事業者との対話型市場調査(サウンディング調査)を実施し、12の事業者から意見等を伺った。翌28年にこのサウンディング調査に基づき運営事業者を募集したところ、1社から応募があり、その事業者を選定し、同年11月に基本協定を締結した。平成29年3月に少年自然の家を廃止し、リノベーション後、同年9月23日「泊まれる公園 INN THE PARK」オープンとなった。

エントランス外観。白て塗装しシンプルにして、ロゴ などでスタイリッシュに見せている。

エントランス〜レセプション〜サロン&カフェ。
  
廃材などをうまく利用して、シンプルな中にも新しい価値の創造を感じさせる什器たち。カウンターテーブルも廃材の木を敷き詰めて樹脂で固めていた。コンセントも通常床に使うものをテーブルに配置するなど無骨ながらもカッコいい。このサロンアンドカフェは、約48人収容(全館貸切利用のみ)。

本館1階の研修室。この日はギャラリーとして使用。ライブペインティングが行われていた。

私が宿泊した宿泊棟C。

ロッジの様な雰囲気で必要最低限の部分のみ手が加えられている。トイレは新しくなっているが洗面台は当時の少年自然の家の面影を残す。

外の焚火場〜BAR。カウンターなどもあり結婚式の二次会などのパーティーにもってこい。

夜の食事の時も子供たちが戯れるスペースなどもしっかり確保してあるので家族みんなで楽しめる様になっている。

地元の食材をふんだんに使用した料理。夕食は地元産品を使った6品のお任せコース。

サロン&カフェからは海を見ることもできる。公園では早朝からトレーニングする人たちも沢山いた。

朝食は季節のサンドイッチとミネストローネとコーヒ。野菜を挟んで食べてもいいしサラダとして食べてもいい。

ランドマークにもなっている球体テント。室内はエアコンや電源もありとても快適。

景色は森の中。とても最高な朝を迎えられそうである。

□活用までのプロセス〜事業形態〜資金の流れ〜今後の展開
この様に生まれ変わるまでには様々なプロセスがあった様だ。事業仕分けや行革の提言により、廃止の方向で協議を進めていたが、建物を所管する教育委員会は、教育施設廃止によるネガティブな印象があること、また、市内小中学校の利用は少ないものの、ボーイスカウトなどの社会教育団体などの利用は一定数あったことから、それらの団体や利用者への配慮の必要性について懸念していた。

また、公園管理を所管する緑地公園課としては、教育委員会から老朽化した施設を引き継いで公園施設とすることは、維持管理費や運営の負担増の要因から極力避けたい意向を持っていた。

また、資産活用課、いわゆる管財課は、沼津市の全市的な公共施設マネジメント計画は策定していたものの、個々の施設の活用方法については各所管課で決定するものとのことであり、当時のこの施設の利活用については各課の考え方は消極的だった様である。

そのような中で「公民連携推進担当」、当初は企画部政策企画課、のちに都市計画部まちづくり政策課、いわゆる都市計画課に担当がおかれたが、この担当が縦割りを突破し、庁内の意見集約や民間事業者との調整などワンストップ窓口の役割を果たしたことで、スムーズに物事が運び、各課の課題などが解決でき、今の状況があるということだ。

この「公民連携推進担当」の他に、官民連携体制を横断的に構築するため、庁内各課からの職員で構成された組織である公民連携推進プロジェクトチームも設置されている。

平成28年6月に募集要項の公表をし、2か月後の8月にオープン・エーが応募、翌9月に同社を運営事業者の優先交渉権者として選定、11月に基本協定を締結。その後、(株)オープン・エーが沼津市に子会社である(株)インザパークを現地運営法人として設立したことから、平成29年3月に市を含めた3者で実施協定を締結した。

現在の施設については、リノベーションした施設である旧少年自然の家などは、公園施設「管理」許可、新たに事業者が設置したテントエリアは、公園施設「設置」許可となっている。南側の芝生広場や園路などは、もともと公園であることから引き続き市が管理していて、誰でも自由に利用できる。

事業形態は、沼津市と事業者の間で基本協定及び実施協定を締結している。この事業は、事業委託や指定管理制度による公の施設の管理委託ではなく、都市公園法第5条に基づく公園施設設置許可及び管理許可により運営を行っている。

これは、委託では「仕様」、指定管理では「協定」で事業内容を行政側が定め、一般的には対価にあたる事業費などを支払うが、この施設は設置・管理許可制度によるため、仕様や協定にしばられることなく、民間側が自らのアイデアやノウハウを活かした事業が実現でき、行政側から事業費の補助は受けないこととなる。逆に、許可面積に応じた公園施設使用料を事業者から年間約70万円程度支払ってもらっている。

資金の流れについては、(株)インザパークは金融機関からの融資や、「ぬまづまちづくりファンド」から出資を受け、事業を運営している。ちなみにリノベーション時に市は主に経年により老朽化した設備関係を改修していて、エアコン設置(各宿泊棟の空調設備)、トイレの洋式化、電気設備改修(変圧器等)などを行った。トイレがウォシュレット付きではなかったことはここが関係しているのかもしれない。また、耐震未対応の施設(研修棟)、が入り口前の駐車場にあったが、この解体工事も市が実施している。

それ以外の本館、浴室棟、宿泊棟などのリノベーションに係る費用は(株)インザパークが負担している。(株)インザパークは、運営することで利用者から料金を受け取り、沼津市へ使用料の支払いや納税を行っている。今後は、事業者と市で公園全体の価値をさらに高めていくことが、沼津市と事業者とが目指すべき、公民連携の姿であるということだった。

※「ぬまづまちづくりファンド」について
ぬまづまちづくりファンドは、国土交通省と民間都市開発推進機構(民都機構)が、地域金融機関(沼津市では沼津信用金庫)と連携し地域課題の解決に向けた民間まちづくり事業を支援する「マネジメント型まちづくりファンド」として設立されたものである。ぬまづまちづくりファンドの出資対象は施設改修としていて、インザパークの案件では沼津市が行った改修以外の改修費用に充てている。

このぬまづまちづくりファンドは設立の全国第1号であるとともに、出資の全国第1号がインザパーク案件となっている。また、出資のほか、沼津信金からのハンズオン支援(出資先と伴走していく支援)をインザパークに支援し、支援されたインザパークは沼津市に対してまちづくり事業を実施するものとなっている。

今後の展開については、事業期間は都市公園法上の最大許可期間である10年間、インザパークは2017年度(平成29年度)から許可を出しているので、2027年(令和8年)までとなるが、別に結んでいる協定によりさらに10年間の期間延長も可能としている。施設の機能拡充については、テントの増設や芝生広場での飲食物販売の継続的な営業を検討している。

また芝生広場は市が直接管理しているエリアだが、沼津市ではこれまで誘致が難しかった集客力のある全国的なイベント、大規模な野外映画祭やマルシェ、結婚式などの誘致・開催をインザパークが積極的に行っているので、市にとって集客や沼津市のシティプロモーションに大いに貢献してくれている。

これまで、市内の他の公園で映画上映や結婚式は担当課として許可をした例がなく、この場所で初めて開催していて、特に結婚式はかなりニーズも高く数多く開催されている。

(株)インザパークは令和元年度の都市公園等コンクールにおいて、最優秀賞である国土交通大臣賞を受賞した。

前橋市議会議員 岡 正己

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