2021年7月21日

令和3年度第2回市町村議会議員特別セミナー。

研修1日目。

・滋賀県知事 三日月 大造氏
本当の意味での「健康しが」へ」

現場主義を掲げる三日月知事は滋賀県内各地の集落で短期間(約1週間単位)移住を7年間で13回実施している。即発されて福井の杉本知事もやっているとのことだった。市町村と違って県は広い。その端から端まではかなりの違いがある。群馬県でも地域ごとの特性はかなり違う。

県内市町と一体なった取り組みとして、電子申請システムの共同調達を行い、ライフイベント(転入、転出、転居、結婚、妊娠・出産、離婚、死亡、指名変更)や事業者向けの手続きガイドがワンストップで手続きが完結する。また、根底にある信頼関係を大事にするために19市町(13市6町)の首長による1年に4回の首長会議も開催している。テーマは投票で決定する。

また、近江鉄道線の活性化にも取り組む。5市5町による法定協議会を設置して公共交通ネットワークの再編を行った。地域の公共交通網を見直し、全線存続のため、「公有民営」方式による上下分離への意向を決定した。施設は自治体、運行は鉄道会社の公設民営(上下分離)は全国初となった。

滋賀県の人口は外国人などの影響もあり若干増えている。またいろんな生き物の南限になっていたり作物の北限になっていたりする。滋賀県といえばなんといっても琵琶湖である。440万年前に出来て、 貯水量275億t、1450万人の命の水源となっている。 琵琶湖にしか住んでいない固有種が60以上もいる。1977年の赤潮の発生を受けて、今から40年前にびわ湖条例が制定された。また、琵琶湖の水を資源に様々な産業が集積している。

滋賀県の紹介として国の定めるナショナルサイクルルート第1号のビワイチ、近江牛、石田三成、長寿県(男性1位、女性4位、シルバー人材センター登録率 2位)、図書館の貸し出し冊数2位、比叡山、近江を制するものは天下を制す 沖島、近江商人(3ぽうよし・マルチステークホルダーズ)などなど滋賀県の紹介が止まらない。トップセールスマンといった感じだ。

コロナ禍を経験して〜危機を転機に〜
コロナ禍によって顕在化された様々な課題や危機感の高まり。この危機を転機に、そして好機にしていくために、人と人の繋がりの大切さ、持続可能な社会、滋賀県のポテンシャルなどを再認識した。

助け合いと利他のこころのもと、滋賀県COVIT19災害コントロールセンターの設置、潜在看護師にお願いしてワクチン接種サポートナースプロジェクト(2ヶ月間で622人)、一人暮らし学生に近江米お見舞い、外国人学生に食料品とマスク、大阪が大変だった時に重傷者の受け入れや看護師の派遣などを行った。

ポストコロナ社会に向けては、3つの健康(人の健康、社会の健康、自然の健康)が必要とのことだった。人の健康として、地域資源を掘り起こす、みせる、つなぎながら意識しなくても、楽しみながら自ずと健康になる健康しがツーリズムや子供達の声を聞く試みのスマイル・アクションがある。スマイル・アクションは子供たちにアンケートを取り(3万2千通の返信)、子供達の声に基づいて新しい7つの行動様式を作成した。アンケートの分析をしていた父兄が大人たちのスマイルアクションも作成し、子供目線で考えることが実は大人社会が良くなってくることにつながった。

コロナ禍で強く感じたこととして学校は最後まであけておくべきであると語っていたことも印象的だった。新しい母子保健制度(フィンランド:ネオボラ)の検討なども行っていくという。

社会の健康として髪の毛一本から健康がわかる技術や川の水位を調整できる技術など近未来技術の社会実装と地域の健康を支える公共交通をあげていた。運びたい人と運んで欲しい人を繋ぐだけなのに公共交通は非常に厳しい。新しいデマンド交通は必要不可欠である。自動車中心から歩く人に優しいまちづくりが求められている。交通税という選択肢をあげている点は面白かった。例えば1人年間100円で年間1億になる。このお金をバリアフリーのための費用などに充てる。ちなみに琵琶湖森林税は1人800円で年間20億円になる。こういう仕組みを公共交通で実践する事ができないか。税の専門家と議論しているが最終的には住民投票で賛否になる。

自然の健康として、琵琶湖独自のSDGs、MLGs(マザーレイクゴールズ)を策定した。また、2050年CO2 ネットゼロに向けても動き出している。その他やまを健康にする取り組みや、森に親しむ取り組み、ゴミを資源と捉え地域内循環することも行っている。

死生懇話会を実施。死を直視することで生きることを充実させようとするもの。避けられない死を直視しようと2回議論した。死にまつわる課題や可能性を議論することでものを考える土壌が豊かになればいいということだ。

タウンミーティング & 次世代会議では環境のこと福祉のことなどを無作為で抽出(選挙人名簿から裁判員制度のように)した県民との応答性のある対話を通じて県民の素直な思いを受け止める。未来のことは次の世代の人たちで考えるための次世代会議も開催している。

みどりと水辺のビジョンでは、ここは守ろう、ここはいかそうと国交相のパークPFIなども活用しながら、防災の面、上流と下流、右岸左岸など様々な流域治水から治水強化している。歴史文化から川の氾濫や元は池だったことなど川や水を通じて歴史を紐解いてまちを活性化する。

多文化共生については、都合良く外国人に働いてもらうのではなくてしっかりと住民として 今いる一人一人を大事にしようと心がけている。何事も急がば回れ(滋賀県の格言)である。
さまざまな生きづらさに寄り添うために複雑に絡み合っている課題に対して市町村と一緒に仕組みを構築したい。例えば生理の貧困について議論したり、保健師人材の確保や保健所の機能の強化など。

人と人とが繋がる交わると考えると交通は起点であり文化の源泉でもある。交通を通じて街を元気にすることはできる。民間も人材不足である。交通税などでみんなで負担を分担する事ができないか。財政の中で交通にだけ回せない現状がある。保守費用を負担することは保守技術の伝承にもつながってくる。上下分離方式で一番大切なのは安全対策である。自治体が保全費用を補填し持続可能になる会社組織を作る。運行部門と施設部門を分ける。自治体の作る組織隊に編入して当たらな組織隊を作る。市町村だけでは市域を越えられない。県は市域を越えていく交通を守り市で財源を工面する。

・京都大学大学院法学研究科 教授 曽我謙悟氏
「改めて議会とは何かを考えるー政治学の知見から」
突然、「カバ(オス)の体重は?」という質問方始まる講義。参加議員が答える方法は、紙に書くものと口頭の2通り。紙に書くものは純粋に自分が思ったものを書くが、口頭は前の人の答えによって答えが変わっていくという実験だった。口頭は他の人の答えがわかるため答えがひきづられる。これは答えにばらつきが小さくなり多様性が縮減されることを意味している。

何かを答えるときには集合知が働く時と働かない時がある。答えがわからないところに答えを出す一つの有効な方法として多様な人々の考えの平均がわかるという意味では口頭になる。
(参考:三人よれば文殊の知恵、コンドルセの陪審定理)ただし、より多様であることが必要。アンカー(最初の答え)にひきづられると多様ではなくなる アンカーの影響力は強い。
レストランで先に頼んだ人と後で頼んだ人のどちらが満足度が高いかといった実験では先に頼んだ人の方が満足度が高いという結果になった。これは日本とアメリカで理由はちがうのだけど同じらしい。日本人は先に頼んだ人に、「じゃあ私もそれで」と頼む人が多いため元々食べたいと思っていないものなので満足度が低い、アメリカでは先に頼んだ人と違うものを頼む人が多いのでこちらも食べたいものと頼むので満足度が低くなる。どちらにしても前の人の答えにひきづられるといった部分は一緒である。

議会での決定は、集合知の探索ではない。そもそも全員の意見を用いるのではなく多数決で決める。ではなぜ多数決で決めるのか。集合知とは誰も分かっていないが、答えがひとつあるという場合に生じる。議会での決定は答えがそもそも一つではない、各自がこれが答えであるというものを持っていて、その上でこれを答えとするというものを集団として選ぶ必要がある。
そのために多数決となる。

多数決は必ずしも過半数でなくても良く特別多数もある。特別多数になるとより多くの同意を得られたものとなるが「決まらないことが」増えてしまう。なので多くの場合は過半数となっている。過半数で選択肢が二つなら、必ず決定ができ、かつ、賛成する人は反対した人より多いということになる。裏を返すと選択肢3つ以上だと、過半数で決まらないこともある。

それでも決められないなら相対多数を取ることもできる。もう一つは選択肢を上位二つに絞りその二つで決める決選投票もある。どちらもよく使うがそれぞれに問題がある。

・選択肢三つ以上の難しさ
決選投票は最初にあえて支持していない人に入れたりするなどの戦略投票が可能で結果が変わってしまう。相対多数でも戦略投票を引き起こしうる
課題、三つの選択肢への選好(どれが1番、2番、3番)をできるだけ生かしながら決める
・コンドルセ勝者:選択肢のペアを作る、どのペアでも勝ったら、それは最終勝者になる。文句ないが勝者不在の場合も堂々巡りの場合も出てしまう。
ボルダ得点1位3点 2位2点 3位1点の合計点で決める方法もある。
相対多数の問題を解消するが逆に過半数が1位に選ぶものでも落選することや、やはり戦略投票は生じる。では、どこまで心配しなければならないのか。実は循環が生じるような選好の配置になることは少ない

戦略投票の前提は、他の人がなにを好んでいるかを知っていることがわからないならば正直に投票するのがベストである。この決め方でいのか、決め方を変えると結論は変わるのかを考えることが大事である。

議会での議論は、なんのためなのか。選好を集約して集団として一つの結論を得ることの前提がある。一人一人選好を持っていてそれは変わらない。選択肢はあらかじめ与えられているのだ。しかし、議論していく中で、これらは変わっていく。

なぜこの選択肢が良いと考えるのか根拠を問い直すことで別の選択肢が検討の対象となる。ではなぜなぜ考えが変わるのか。そこにはバイアスの存在がある。バイアスとは素早く判断するための判断の方向である。人間が生存のために身につけてきたもので、自然なものではある。
ヒューリスティックスを利用することも条件によっては有効である。確証バイアスとは自分が思っている証拠を探してしまうこと。

ハロー効果の説明
太郎は頭が良く勤勉で頑固で嫉妬深い
一郎は嫉妬深く頑固で勤勉で頭が良い
最初に良い情報が来ると良く結びつけていく。最初に触れたものから離れにくいのだ。例えば2、4、8とくるこの並び、見た瞬間に偶数という法則に縛られる。人はルール違反には敏感である・これは進化の過程で協調を促進するためだと言われる。自粛警察などの根底にもなっている。逆に考えればルールになっているものには強い。

人は一度解決してしまうと疑問に持たない生き物。キャリーケースとトランクの事例。キャリーケースの登場でポーターという職業が必要なくなった。なくなってしまえば誰も気にしない。

まとめ
議会が果たしうる様々な役割と可能性。
意見が分かれているところにともかく一つの決定をするだけでなく、答えを全員で探しにいくことも必要である。話し合うことで意見を変えることも新たな選択肢を探すこともある。
多様性が持つ強み、難しさもある。多様であれば決定の難しさは増すが、多様でなければ間違う可能性は増してしまう。我々の議会のあり方を振り返り、それぞれの強み弱みにあった決め方を考えていくべき。議員同様、有権者もバイアスを抱える存在であることを考慮しつつ。

□本日のめぶき

前橋市議会議員 岡 正己

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