2021年7月22日

令和3年度第2回市町村議会議員特別セミナー2日目。

令和3年度第2回市町村議会議員特別セミナー2日目。

・明治大学政治経済学科 教授 加藤 久和氏
「人口減少社会における地方自治体の役割ー地方創生・東京一極集中と新たな国土づくりー」

東京に人が集まりすぎている今、地方の役割とは何か。
令和3年7月21日の日経新聞で通勤時間、保育環境などのデータから 「多様な働き方が可能な条件が揃う都市」ランキングがあり、石川県小松市、鳥取市、高岡市、西条市などがランクインしていた。これらの都市はこれから人が集めやすい都市とも言える。

人口減少はもはや当たり前である。どの程度の規模で、どのくらいの影響があるのかを考えていく。2020年国勢調査で総人口は1億2,622万7千人で2015年からの5年間で山梨県の人口より多く減少した。

全体的には高齢者人口も減少しているが都市部は65歳以上人口はプラスになっている。高齢者が増えたときに医療や介護はどうするのか。首都圏の中でも、人口密度が低いところほど人口の減少が高く、人口の規模が小さいところほど人口の減少が大きくなっている。

地方消滅:2010〜2040にかけて「20〜39歳女性人口」が減少する自治体
人口減少時代に合わせた地方のあり方を考えていく必要がある。若者の流失は地方の人口減少の最大の原因である。東京圏は国際都市に発展していくことも求められている。以前のどうやって人を増やし、受け入れていくかということから、地方への移住、関係人口の増加など、どうやって移住を促すかということになっている。やはり必要なのは現役世代なのだ。

東京に人を来させないようにすることも有効。地方からの学生は上京当初はいずれ地元に帰りたいという思いがあっても4年経つと帰りたくなくなってしまう。帰りたくさせるには、地方の魅力を発信する中心的な市街地が必要なのである。

地方創生の定義とは人の数を維持し経済を活性化させること。コロナ禍によって東京一極集中が止まったが、東京圏(埼玉、千葉、神奈川など)から外へは移動していない。
2020年に改訂された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の新たなメニュー
1DX の推進 カーボンニュートラル
2地方創生テレワークの推進
3魅力ある地方大学の実現と地域産業
4関係人口の創出・拡大
5企業版ふるさと納税(人材派遣型)
6スーパーシティ構想の推進

□人口移動の現状と東京一極集中
地方から東京圏へ流入していた。オリパラが東京一極集中を促していたがこれからは今までのような一強集中はなくなる。大阪圏、名古屋圏は流入流出がほぼ一緒である。なぜ人が集まるのか。それは雇用、仕事、働き口が多いからである。人の移動と有効求人倍率には密接な関係があり、経済が悪化すると地方の仕事が落ち込む。転入率の高いところは転出率も高い
東京圏への転入は仙台、大阪、札幌などの地方中枢都市から増加傾向にある。

仕事の質やバラエティ、若い人が好む仕事(飲食でも、サービス業でも)が充実している必要がある。20代〜30代にかけてが転出のピークになっている。コロナ禍もあって千葉では2世帯同居や住宅融資支援や住宅支援など東京から若い人を奪い取ろうという政策を打ち立てている。

都市のメリットとは集積の経済である。例えば秋葉原は変わった人たちが沢山いるというイメージがまた人を呼ぶ。重たくなれば引き寄せやすくなるのだ。一回増えてくると渦のようなもので人が集まってくる。人が集まってくると新しいものが生まれる。人が集まってくるといろいろな人を採用しやすいというメリットはあるが、住宅の価格や地価が上がってくると出生率が下がるなど様々なデメリットもある。

東京は世界で見ても集中しすぎている。また日本は自然災害のリスクもある。急速な高齢化にどう対応するのかも課題だ。東京を弱体化させるのではなく、中核都市を強化することで対応できるのではないか。所得の高いところほど転入してきている。

地方創生と自治体の役割と課題。徳島県神山町の事例紹介。神山アーティストインレジデンス、WEBサイト「イン神山」、ワークインレジデンス、テレワーク、It企業(Sansan)、成功事例だが、これには長年の経緯と偶然と人の繋がりなどがありどの場所でも当てはまるというものではない。地方創生は真似できない。その土地のオーダーメイドで対応しなければならない。

島根県海土町(あまちょう)の事例紹介。よそもの活用、田舎ベンチャーなど。当初から計画を立てたわけではなく偶然うまくいった事例。目標を達成した計画は半数にも満たない。

地域活性化は簡単なことではない。あと5年〜は進んでいくが もっと先まで考えた長期的な視点を持つべきである。自分の街でやれることは多くはないはずだ。また、全ての市町村を掬い上げることはできない。

連携中枢都市圏構想
地域において、相当の規模と中核性を備える圏域において、市町村が連携しコンパクト化とネットワークにより人口減少・少子高齢化においても一定の県域人口を融資活力のある社会経済を維持するための拠点を形成する。
36市(34圏域)

行政のフルセット主義型を脱却し、圏域単位での行政をスタンダードにする。コンパクト化とネットワークを結んでいくときにどうしていくのか。10万人くらいの都市であれば、都市機能やサービスが集まっている。(ちなみにスターバックスが出店するには20万人くらい必要。スタバが都市の香りを醸し出し人が集まってくる種となっている)

道州制議論は区域例が混乱を拡大した。あらゆる行政サービスを単独の市町村だけで提供する発想は現実的ではない。行政手続きのオンライン化を進め、核となる都市と近隣市町村による連携のプラットフォームを作ればいい。地方創生で考えるべき視点として撤退も視野に入れつつマイナス・サム社会の覚悟も必要。また、若い人たちが主役になる30年後の地域を考えて若い人が主役の長期の戦略を考えるべき。

中央VS地方の視点は古い。中央政府が国土デザインを提案していくことに慎重であってはならない。地域を俯瞰して客観的に考えていく必要がある。地方は多様で、地方活性化に共通の解はないのだ。

高学歴・20−39歳女性が満足する拠点づくりは重要。必要なのは、やりがいのある仕事、教育、文化だ。動きやすいのは女性である。これからの地方は教育、保育、医療を強化するべきだ。コンパクトな地域計画が必要で、コンパクト化をもたらすための自治体の役割を考えていくべきである。

フルセット主義からの脱却が必要である。全国一律サービスはもはや限界が来ている。住民はより良い機能を持つ自治体に移動することができるのだ。人口増加を伴う地方の時代から広域連携の時代へ。その時鍵になるのは行政の若い人たちである。職員から始める。行政を担う若い人たちが将来に対する期待、憧れ、仕事に安定がなければすみ続けることはできない。

・東京大学大学院情報学環 教授 塚越 登氏
「Socity5.0  時代の到来と行政のデジタル化」
コロナ禍によって日本の課題となってしまったデジタル化問題。実は頑張っているところも沢山ある。9月からはデジタル庁が創設され、各自治体の方も進んでいく。

コロナ禍などの国家的な困難に直面したときに脆さが出る。しかし日本は課題があり、顕在化してくるとそこからしっかりとやる。コロナ禍によって、オープンデータ、デジタル庁、マイナンバー、データ戦略など困難があるとしっかりやる。逆に困難を受けてデジタル化が進むと言える。

デジタル敗戦国ばかりではない日本。世界最高のIT は日本のものが多い。スーパーコンピューター世界No.1、防災システム(緊急地震速報(3.11がきっかけ))、ゲーム、デジタルコンテンツなどなど。特に緊急地震速報は何千何万の地震計が繋がっていて、どこでどれだけの地震が起きるのか計算し速報を流す。しかも実用化しているのだ。この技術は世界最高のIOT である。日常生活が変わったのに学校は、役所は変化しているのだろうか。

□デジタル・ガバメントの動き
インターネットは1960年台は軍の技術で1990年台に民間に解放されてそこから爆発的に広がっていった。

日本:1997年 情報通信省構想が浮上 橋本内閣、2000年 IT戦略本部 が内閣に設置

□地方自治体・地方公共団体のデジタル化:政府の主要な動き
地方自治体の現状
1、デジタル化とは、DXとは、IT情報技術や、デジタル化技術を導入することが目的ではない。今あるものをどんどん変えていこうということ。陥りがちな間違いは、変えないためのデジタル化ということ。変えたくないひと程デジタルを使う。社会環境の変化に組織を変えなければならないのに技術を使ってしまう。

例えばETCである。現金もETCもどちらも使えるようにする料金所は技術の無駄遣いである。かなりのコストがかかっているためだ。シンガポールは全ての車にETCがついているためコストがかからない。日本の得意な変えない為の技術である。現金利用を変えたくないので技術で頑張ってしまう。デジタル技術に合わせて、いかにスムーズに制度移行するかがDXだ。化け物みたいな技術を入れることがDXではない。

デジタル技術はそれにあった仕事のやり方をしないと有効に働かない。制度改革・業務改革・組織改革が鍵である。働き方や組織構造、業務プロセスを変えなければデジタル技術(I T、ICT)は単なる負担増になる。

付加価値の向上(住民に喜んでもらうこと)提供価値の向上
業務の効率化から提供価値の向上へ、ムリ・ムダ・ムラを減らし、デジタル技術を用いて提供価値を向上させる。変革するべきは、知識・スキル、環境、マインドセットの見えない3層である。また、変革するべきDXプロジェクトの阻む3つの課題としてアイデアのクオリティ、人を巻き込めない、試行や開発の管理ができない事が挙げられる。

デジタル技術はマイナス技術である。コスト削減、業務の効率化、デジタルで一番やりやすいのは人件費削減である。売り上げを上げる、新しい商品を生み出すのは人間の仕事だ。仕事が多くて人手が少ない場合はデジタルが使えるが、売り上げがなくて困っている場合、DXでは価値創造ができない。

アイデア事例として例えば物流。作るものを動脈、捨てられるものを静脈に例えた時、DXは動脈に使えると思われがちだが、実は静脈に使ったほうがいい。産廃の部門など。藤沢市はゴミの収集車のデータを2次利用、3次利用へとつなげ新しい都市情報産業の形を目指している。バックエンドにデジタルを使う事が有効だ。

□自治体行政のDX デジタル三原則
1、デジタルファースト:個々の手続き・サービスが一貫してデジタルで完結する
2、ワンスオンリー:一度出した情報は、二度提出することを不要とする
3、コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続き・サービスをワンストップで実現する

サービス設計12箇条
1、利用者ニーズから出発する
2、事実を詳細に把握する
3、エンドツーエンドで考える
4、全ての関係者に気を配る
5、サービスはシンプルにする
6、デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
7、利用者の日常体験に溶け込む
8、自分で作りすぎない
9、オープンにサービスを作る
10、何度も繰り返す
11、一遍にやらず、一貫してやる
12、情報システムではなくサービスを作る

地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進
行政手続きのオンライン化、情報システム等の共同利用、AI・RPA等による業務効率化、オープンデータ、ガバナンス強化と人材確保・育成、デジタル・ガバメントの構築に向けた地方公共団体の官民データ活用推進計画策定。

ガバメントクラウドを活用し共通化、システム一本化できればかなりコストは下がる。節約できたコストをさらに効率を良くするために使う。地方自治体の仕事、体制を見直す 本当のDXとはそういうことである。

AI・RPAによる業務の効率化、オープンデータを活用した地方発のベンチャーの創出や地域課題の解決、オープンデータ・バイ・デザインの考え方に基づく情報システムの設計や整備、
ガバナンス強化と人材確保・育成など。デジタル・ガバメントの構築に、向けた地方公共団体の官民データ活用推進計画策定 デジタル化の現状の見える化、デジタルボランティアなども有効。

□地域課題の解決・地域経済活性化
電力・センサデータ活用における介護予防のためのフレイル検知。電力の使い方からフレイルを検知することで要介護になる前に早く手を打てる。また、電力メーターで不在が確認できるなどで配送業の時間ロスを防ぐこともできる。

3,000万円の法則というものがある。地域課題は数百万円規模のものが多いが、DXを大手に頼むと大体3,000万円くらいになる。地方のDXは1人ではできないが大手でもできない。安価にできるDXが重要だ。地方のベンダーが身軽にやることが理想だが、現実は地方のベンダーは都会のために働いている。地方のベンダーが大手の下請けになっている。

□本日のめぶき 「スペースマウンティング」

前橋市議会議員 岡 正己

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