2021年8月4日

市町村の森林政策「森林経営管理制度」。

市町村の森林政策を学ぶ。

森林に関しての様々な問題は私たちの命に直結している。市町村の森林政策研修、1人目の講師。

林野庁 森林整備部 森林利用課 森林集積推進室 川村 竜弥氏
「森林経営管理制度と森林環境譲与税について」

森林経営管理法によって各市町村の森林は各市町村が自ら管理する時代になった。森林経営管理法とは、経営管理が行われていない森林について、市町村が森林所有者の委託を受け経営管理することや、林業経営者に再委託することにより、林業経営の効率化と森林の管理の適正化を促進するものだ。経営管理が行われていない森林について市町村が仲介役となることで森林所有者と担い手をつなぐ仕組み。林業経営に適した森林であれば林業経営者に経営管理を再委託できるが林業経営に適さない森林は市町村が自ら管理する。市町村からすればその負担や役割はとても大きくなっている。この市町村が管理する森林について森林環境譲与税を活用することが想定されている。

日本は国土の3分の2が森林で、その森林の約6割が私有林で、その私有林の約5割が人工林である。この人工林は先人の努力により植栽、保育されてきた。しかし、人工林の半数が一般的な主伐期である50年生を超えており、資源を有効活用すると同時に、循環利用に向けて計画的に再造成することが必要になっている。

人工林の樹種別面積としては一番多いのがスギ、続いてヒノキ、カラマツとなっている。造林技術が確立していたスギ、育林体型が早くから確立していたヒノキ、試験的に一生懸命植えたのがカラマツということだった。
森林蓄積の推移としては1966年から比べると、2017年では体積は約6倍になっていて、毎年約7,000万㎥増加している。天然林、人工林ともに増加している。

問題は非常に若い木が少なくなっているということ。木材は今の加工技術だと太さが20センチ〜30センチ(丸太にしたときに細いほう 末口の直径)の木が使いやすい。温暖化の観点からも非常に重要で若い森林を増やしたほうがいい。

□木材需要について
1955年はほとんど国産材を使用していて、自給率は100%に近かった。戦後、日本の森林は荒廃していた。伐採が進み禿山が多く、災害も発生していた。木材は1964年に自由化されるまで外貨割当制度があり外に出せなかった。自由化によって外国の安いものに圧迫されたのは間違いではない。その後1980年に価格のピークになる。

ここ10年くらいは間伐ではなく主伐になって生産量が増えてきている。ウッドショックの要因は外材である。国産材も値段が上がっている。0金利政策によってアメリカの住宅需要が伸びて、国内需要を優先しているために外に出てこない。先物で上がり、現実でもあがっている。

□森林整備のイメージ
植栽→下刈り(1〜5年)→除伐(10年〜20年)→間伐(20年〜40年:3回程度)→主伐(50年〜100年)→植栽と繰り返し伐採後に再び苗木を植えることで森林が適切に更新される。森林は、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止などの働きを発揮し、地域に様々な恩恵をもたらす一方、適切な手入れを実施しなければ、その機能を失われる。間伐されないために山崩れや風倒被害が発生することもある。

森林における様々な課題として、多くの地域に手入れ不足の人工林があり、森林所有者の4分の1は地域に不在、境界が明確化されていない、所有者が不明などが挙げられている。これらの問題を解決するために森林経営管理法が定められた。

□森林経営管理法(森林経営管理制度)の概要
1、森林所有者に適切な森林の経営管理を促すための責務を明確化
2、森林所有者自らが森林の経営管理を実行できない場合に、市町村が森林の経営管理の委託を受ける
3、林業経営に適した森林は、林業経営者に再委託
4、再委託できない森林及び再委託に至るまでの間の森林においては市町村が管理を実施

この森林経営管理制度等により以下のような効果が期待される
・市町村(地域全体)
以降調査を通した、地域の森林の所有者情報等の把握・確認、間伐手遅れ林の解消や伐採後の再造林の促進、埋もれていた林業経営が可能な森林が経済ベースで活用される、新たな森林整備に携わる人が増えて定住人口が増加する等

・森林所有者
市町村が介在してくれることにより長期的に安心して所有森林を任せられる、林業経営者が経営管理を行うことで所有森林からの収益の確保が期待できる等

・地域の林業経営者
多数の所有者と長期かつ一括した契約が可能となることで経営規模や雇用の安定・拡大につながる、所有者不明林も整備ができるようになり間伐等の施業や路網の整備が効率的に実施できる等

参考:令和3年6月15日に閣議決定された森林・林業基本計画における森林誘導の考え方としては、自然的条件に照らして林業経営に適さない人工林は、管理コストの低い針広混交林(スギや広葉樹が混じり合った森林など)等へ誘導。

□森林経営管理制度の取り組み状況
(意向調査→経営管理権集積計画→経営管理実施権配分計画)
・経営管理実施権配分計画については、19市町村、305ha策定され、林業経営者によって間伐等が実施(令和2年3月末見込み)
・市町村森林経営管理事業については、79市町村において間伐等を実施
※所得不明森林等に関わる特例措置もある

森林経営管理制度を円滑に運用するにあたっての課題
【意向調査:事前準備】
・住民の関心がない → 座談会や説明会の実施
・森林情報や協会が明確化していない →  県が実施したレーザーデータを解析、地元の精通者を雇用し明確化作業を推進
【意向調査:実施〜集積計画の作成】
・どこから取り組んでいいかわからない → モデル地区を設定する、民間事業者と連携
【集積計画:森林整備、路網整備の実施】
・森林環境譲与税の活用 → 市町村独自事業の創設、上流部(山村部)と下流部(都市部)との連携推進
【配分計画:森林整備の実施】
・発注の仕方がわからない → 県から発注システムを市町村に配布、小規模な森林は自伐林家等に委託
※平成29年度より、林業技術者の活用により市町村の森林・林業行政を支援する体制の構築に取り組む「地域林政アドバイザー制度」を推進

□本日のめぶき 「多様な価値観と多様な正義」
多様な価値観の先には多様な正義がある。誰かにとっての正義は、違う誰かにとっては不義かもしれない。多様性とは違いを認め合うことである。

前橋市議会議員 岡 正己

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